ファンレター



歩行者天国のような状態になった路地街に、変わらず浮かび上がってるネオンの文字。

苦手な入り口のお兄さんに目をやって、今度は怯むことがないように、大きく深呼吸をすした。



平気な顔してればいいんだ。

堂々としてれば、おかしなことなんて何もない。

そして茶髪のスーツ姿に、一歩一歩近付く。



と、あれ?

このホスト紛いの人は…



「おや、いらっしゃい。よく来たね」


「大北さん!」



助かった、覚えてくれた!



座り込みそうなくらいの安堵感。

確かに頼れるタイプかも。



そういえば、夜のFUTURE SPACEを見るのは初めての多美。

目玉があちこち泳ぎ回る。



「な、なんかやばくない?私らには合わない場所だよっ」


「裏に行けば大丈夫だから」



なんだかいつもと立場が逆転。

多美ってばかわいい。




それから私と多美は、あの時のグレーの扉の部屋に案内された。



「ソファでよかったら泊まってもいいよ。僕は朝まで表にいるから、何かあったら呼んで」



一通りの話を聞いて理解してくれた大北さんが、親切に言葉をかけてくれる。



そして扉を開けながら



「おい!今日はここにお客さん泊めるから、店でくつろげ」



と中の人に声をかけた。



「え!あれっ!」


「桂さん!」



力になってくれそうな人が

また現れた。





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