ファンレター
一人、また一人と、制服姿が門を出て来る。
ドクンドクンと、胸の音も大きくなってきた。
前に会ってから、そんなに時間も経っていないのに、また数ヵ月振りに会うみたいで、気持ちが落ち着かない。
なんか格好悪いな、私。
十の追っかけみたいで。
十と一緒にいたくないだなんて、何様のつもりで言ったんだろう。
他人から見たら、十が有名になったから、やっぱり自分だけのものにしておきたくて。
みんなに自慢したくて、いつまでも絆を繋いでおこうと必死になってる、嫌な子に見えるはずだよね。
十と一緒な学校に通う人たちを、こんなにうらやましく感じるなんて思わなかった。
十は、どんなふうに勉強してるの?
呼ばれたら、どんなふうに返事してるの?
昼休みは、誰と過ごして、何をしてるの?
知りたくて、知りたくて、知りたくて。
また、十と一緒に高校に通いたいと思った。
一緒に電車に乗って、一緒に笑ったり、ケンカしたり。
十には、普通の高校生でいてほしかった。
本当は、芸能界になんか入ってほしくなかった。