ファンレター
なに?
なにが起こってるの?
ざわつく生徒達の隙間から、フラッシュが放たれた。
「すみません、鷹宮くん、一言だけもらっていいかな」
「濱田さん、鷹宮くんは年下ですが、弟みたいな存在以上の存在ってことでいいですか?」
どこかの記者らしい。
そんな中を、十は友達に手を振って、何の抵抗もなく濱田サキの車に姿を消した。
桂さんが私を車の中に引き込んで、その横を十と濱田サキの車が通り過ぎて行く。
「どういうこと!?濱田サキが十くんの送り迎えしてるわけ?」
多美は助手席のシートを抱え込んで、私の方へ身を乗り出した。
もう、頭が真っ白。
バックミラー越しに遠ざかっていく濃紺のセダンは、しだいに陽炎のごとく歪み始めて、そのまま景色の中へと消えて行った。
そこには、空だけが残って、私の心にまで風を送る。
自分が、何に衝撃を受けてるのかわからなかった。
濱田サキと仲がいいのは知ってる。
記者に追われるような立場なのも知ってる。
わかってて、逢いに来たのだから。