ファンレター
「大きく育てるためには、いろんな道具が必要なのです」
あの時の尾根さんの言葉。
道具って、マスコミの事を言ってたのかな。
でも、どうして今?
車は自然のあふれた大きな公園の駐車場に入った。
今日は平日。
人の姿はほとんどなくて、子供を連れた散歩の主婦が、一組二組見えるだけだった。
「なるほど。こっちの行動もお見通しって事だな」
そう言った桂さんの視線の先には、ベンチで手帳を広げる尾根さんの姿があった。
濱田サキの車を始めとする、私達、記者たちの車が次々に止まると、尾根さんはゆっくり立ち上がって、木陰の光をまといながらこちらに歩いてきた。
ドアを閉める低い音と共に、役者が揃う。
「賭けに出る気だ。気合い入れろよ」
桂さんは、私の頭をくしゃっと撫でた。