ファンレター
「うそ!すごい…」
これにはかなり驚いた。
こうなると、十が芸能界を歩んでることにかなり実感が沸いてくる。
「まだ商品数は少ないんだけど。ほら、うちわもあるよ」
写真用の十の笑顔を見てると、なにかこっちが恥ずかしくなるようだった。
でもホントにすごい!
「多美はこれ買ってるの?」
「うん、一応全部そろってると思う。絶対私が一番のファンだと思うし」
「…そうなんだ」
得意気に言う多美を見て、少し胸がズキッとした。
ファンてみんな自分のことをそう思ってるんだろうけど、十のことになると、それをすんなり聞き流すことはなぜか苦しかった。
「一見控えめだけどさ、涼って実はかなり十くんのファンだと思うんだよね~。ちがう?」
「えっ…」
突然の発言に動きが止まり、心の中を見られたように私の顔がどんどん赤くなるのがわかった。
思わずうちわの十から視線を反らす。
「べ、別に。全然…普通だよ。普通に応援してるだけ。みんなほど真剣に考えてないってば。中学まで一緒だったし、なんか…応援しないといけないかなって思ってるだけで」
口数の多さが、よけいに動揺を目立たせているようになってしまったかもしれない。
でも、本当にそんなつもりはない……と思うんだけど。