ファンレター



尾根さんから意識を解放させて、私は十を見つめた。

多分、私を心配してくれているんだろう。

眉を寄せて、唇をうっすら開いて

十も私を見てる。



「私は…、十と一緒にいたい。十が遠くにいるのがつらくて、毎日会えないのが寂しい。同じ高校に通えないなんて嫌。…芸能界なんて、やめてほしい」




……言ってしまった。

さっきよりも、言ってしまった今の方が、動揺して鼓動が早くなってた。



ホントはね、十の気持ちを確かめたかったの。

本当に十がこの世界を望むなら、ちゃんと応援しようって思ってた。

十の口から直接聞いて、それで自分自身を納得させようって。



でも、気づいてしまった。

私は私のワガママで

十と離れたくなくて、十と一緒にいたくて。



十は、どうするだろう。

何て言うだろう。

もう感覚が、全然ない。



「クックック……。笑わせないでください。今、彼がどれほどの人気を集めているかわかってますか。こんな時にやめるなんて、よほどバカなタレントじゃない限りあり得ませんよ。
さぁ、安心して地元に帰りなさい。君がいなくても、十にはサキがいる。君なんかより、自分に一層成長する機会を与えてくれるサキの方が、十には必要なんです」


「……っ」



ダメだ。

もう立ってられないかもしれない。



十の隣に行きたい。

十に抱き締めてもらいたい。



お願い十、もうこんな所にいないで

一緒に帰ろうよ。





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