ファンレター
フラッシュの音が、余計にイライラさせた。
芸能人て、よくこんな中にいられるな。
振り切る気力もないくらい、私の中から全てが抜け出してた。
「もっと大きい話題が目の前にありますよ。ねえ、尾根さん」
桂さんが、突然大声を上げて記者に呼び掛ける。
振り返った尾根さんの表情は、こちらに迫って来るような鋭い目つきの、硬くて冷たいものだった。
記者の手は止まり、私の頭上からはフラッシュが消えた。
「桂、俺だけの事じゃ済まないんだぞ」
太くて威圧感を感じさせる声。
桂さん、次はないって言われたのに。
「わかってますよ。サキのためにも言ってるんです。道具みたいに利用されてばっかりで、気持ち考えてやったことあるんですか」
えっ…?
記者の動きが、慌ただしくなった。
私は多美に手を取られて、全てを把握しようともがいてる。
道具…道具…
尾根さんの言う道具が、濱田サキ?
サキのため?
気持ちって……?
「桂やめてよっ!……尾根さんに、迷惑かけないでよ…」
だんだん弱々しくなる、濱田サキの声。
こ、この人たちの関係って、もしかして。