ファンレター
家の玄関扉を開けると、花瓶の花を追いやって、十のサインが堂々と飾られてる。
十の父親が
以前持って来たものだ。
「ただいま」
学校から帰った私がキッチンに入ると、夕食支度の手を止めた母が、うれしそうに身を乗り出して言った。
「聞いてよ涼!来週ね、十ちゃんがこっちに帰ってくるらしいのよ。お忍びなんだからお友達には教えちゃだめよ。そうそう、カメラの用意もしておかなくちゃ」
まるで自分の息子のように、十の活躍を喜ぶうちの両親。
小さい頃から毎日のようにうちで遊んでた十だから、仕方ないと言えばそうなのだけど。
ちょっとはしゃぎ過ぎだ。
「ふーん…、会うの半年ぶりだっけ」