ファンレター



多分、余計な話はいらないんだと思った。

私は、私の見ていた風景だけを伝えればいい。



あとは二人の心が、自然に寄り添って行くんだろうって。




「それで、その本屋のおじさんとは短くも長い付き合いなんですけど…。私がこういう業界の子に恋心を抱いてるって知って、おじさんがこの雑誌をくれたんです。そしたら布施原さんの事が載ってたので驚きました。とても素敵な、純愛をしてらっしゃったんですね。

おじさんも、昔こんなふうに愛した人がいたって言ってました。懐かしそうに桜の木を見上げて、その人の事を想っているようで。
それから、私に恋のお守りだって言って、この桜の葉をくれたんです。

あ、今日お呼びしたのは、この桜の葉のお守りを、もし良かったら布施原さんに受け取ってもらいたくて」



ちょっと話を作ってしまったところもあるけど、おじさんの気持ち、伝わるといいな…


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