ファンレター
歩道橋下のバス停に着くと、そこには若いカップルの姿。
彼らに指をさされた時に気がついた。
私の横に立つ人は、誰から見ても鷹宮十だと確認できたのだ。
「十やばい、気付かれたよ」
不安ながらに見上げる私を無視して、十はバスの時刻表に顔を近付けた。
カップルの動きが少し慌ただしくなると、私までアイドルになったかのように緊張が全身を包む。
「十ってば!」
「うち来る?」
「えっ…!」
携帯のカメラを向けられてることにも全く動じないまま、十が私を見下ろした。
この位置から見られると、また昔より男っぼくなった所を見つけてしまったみたいで。
照れて、真っ直ぐ見返せなくなる。
それどころじゃないのに…。
「どうするんだよ」
「ど、どうするって……いいの?」
もう誰かに見られてることなんて、どうでもいいような気がした。
つらい涙を流すつもりだったのに、うれし涙を流せるのかと期待した。