ファンレター
でも、十の顔は真剣だった。
「そのかわりずっとだぞ。今日だけじゃなくて、明日からもずっとうちにいろよ」
「え、そ、そんな…」
有り得ない十の言葉に、一瞬何が常識なのかもわからなくなりそうだった。
何言ってるの?
そんなこと……
できるわけないじゃん。
カップルがキャッキャ言いながら、私達を見続けてる。
「ずっとって…、それは帰るよ。一緒にいたいけど学校だってあるし、家のことだって」
「じゃあ、待ってろ」
「……十?」
…なんなの?
最近十のいろんな表情を発見したから、ふざけてるのか怒ってるのか、本気なのか嘘なのか、瞬時には判断できないでいた。
ただ、十の瞳があまりにも真剣だから、私は視線をそらさないことで、十の存在を感じてた。
髪、少し伸びたな。
背も高くなった感じ。
地面に響く低い音と風圧で、バスが入ってくる。
肩にかかった髪が、少し生温い風を通した。