ファンレター
多美は大げさに高笑いしてた。
「見た?あの子達の顔。引きつってたよね。なんか気持ち良かったぁ」
「ねぇ多美、…さっきの本当なの?」
前をさっそうと歩く多美に、私は心臓をバクバクさせながら問いかける。
「どうして?」
振り返りざまに笑顔で返す多美。
だって私には、十が軽々しく誰かにそんなことをするとは思えなかった。
…女の子を、抱き締めるなんて。
「自分だけだと思ってた?」
「…っ!」
突然真剣な顔になる多美。
ドンと大きな空気が胸に当たるような感覚と多美の眼差しが、私に強い圧力をかけた。
「な…何が?」
全身に冷や汗が流れるように、足の先から震えが込み上げてくる。
自分だけって…
多美は、あの日私が十に抱き締められた日の事を言ってるのだろうか。