ファンレター




プシューッ



扉が開き、カップルがこっちを気にしながら乗り込んでいく。

窓に顔を張り付けたまま、相変わらず仲良さ気に寄り添って騒いでた。



バスが出た後は、急に辺りが静かになった。

車の通りが、減ったせいじゃない。



その時の十が、周りに存在するどんなものよりも、私の中で大きくなったからだ。



ずっと繋ぎ続けてた手。

振動が伝わる。

十が近い。

とても。




「一緒にいたいのはオレだって同じだって。そんなこと、今までのこと思えばわかるだろ」



十……。

眉を下げて、悩まし気な表情で見つめてくる。


どうしよう。

こんなに、こんなに十が好きだよ。





< 210 / 218 >

この作品をシェア

pagetop