ファンレター
プシューッ
扉が開き、カップルがこっちを気にしながら乗り込んでいく。
窓に顔を張り付けたまま、相変わらず仲良さ気に寄り添って騒いでた。
バスが出た後は、急に辺りが静かになった。
車の通りが、減ったせいじゃない。
その時の十が、周りに存在するどんなものよりも、私の中で大きくなったからだ。
ずっと繋ぎ続けてた手。
振動が伝わる。
十が近い。
とても。
「一緒にいたいのはオレだって同じだって。そんなこと、今までのこと思えばわかるだろ」
十……。
眉を下げて、悩まし気な表情で見つめてくる。
どうしよう。
こんなに、こんなに十が好きだよ。