ファンレター
「…だって、十いつもハッキリ言わないんだもん。毎日不安で、こんな気が強くて偉そうな子、早く離れたいんじゃないかって…」
「…おまえ頭悪過ぎ……」
「っ……」
息を吸う間もなく、十に抱き締められた。
私は、いつからこの瞬間を待ちわびるようになったんだろう。
抱き締められる度に、自分の気持ちが重くなるのがわかる。
息ができなくてもいいと思うくらい、この場所が好き。
でもこんなんじゃ、十の重荷に…
「涼ちゃんが好きだよ。すごく」
耳元の声が、全身に鳥肌を立たせた。
十が好き。
好き。
このまま、十の中に溶けてもいい。
服も空気も、私と十の間にあるもの全てが、消えてくれたらいい。
武器じゃない。
白旗の涙だよ。
もう十がいてくれるなら、どうなってもいい。
強がりな私は、降参宣言をした。