ファンレター

沈黙が続く中、私と多美はしばらく視線を合わせてた。

とても長く感じた時間。



あの日のこと、見られてたの？

本当に…？



そして、その場の空気を切るように、多美が急にクスクス笑い出した。



「なに困った顔してるのよ。まさか涼は、本当に十くんに抱き締められたことでもあったの？」



私は反射的に、首を大きく横に振る。



「でしょー？バカねぇ、私だってないわよ。冗談に決まってるじゃない。もしそんなことがあったなら、とっくに十くんの彼女になってるわ。周りの友達にだって言いふらしてるわよ。そうでしょ？」


「う、うん…」



多美の目だけが笑ってないように見えたけど、私はその場をやり過ごすために、何も返さず、ただ黙って苦笑いしてた。

多美のことが正直わからない。



「涼、約束してほしいことがあるの」



考え深気に私の手を取る多美。

どうしてこんなに不安な気持ちになるんだろう。

まだお腹の辺りがソワソワしてた。