ファンレター
念願だった彼氏
***
念願だった彼氏
***
あれから何日が過ぎた頃だろう。
多分2通目の手紙を出してから1週間くらいだ。
多美が私に、一人の男の人を紹介した。
多美の兄だ。
「和哉です。いつも妹と仲良くしてもらってるみたいで、どうも」
多美とはスッと横に切れた目がよく似てた。
でも性格は(第一印象だけど)多美とは正反対の、おとなしめで口数の少なそうな人だった。
私達より一つ年上で、隣街の高校に通ってるらしい。
「涼と撮ったプリクラ見せたら、和兄が会わせろってうるさくて」
多美が少しはしゃいでる。
「ばか!お前が会ってみろって言ったんだろ」
「何言ってるのよ、自分でしょー」
兄妹で戯れ合う姿は、どこか懐かしく見えた。
私も昔は、十とこんな風に言い合いをしたり、笑い合ったりして…。
私はあの時間を、自分から消し去ってしまったんだ。
それは自分の望みだったはずなのに、今はなぜか、こんなに切ない感情が蘇ってくる。