ファンレター



「あれ…ど、どうしたの?おい、お前が放っとくから困って涼ちゃん泣いてるだろうが!大丈夫?」


「あ、違うんです。ごめんなさい」



まただ。

最近、十の事を思い出すたびに涙が出てしまう。

困った癖だな。



「やだ、涼ごめん。つい和兄が正直に言わないから」


「オレのせいにするなよ多美。ごめんね涼ちゃん」


「本当に違うんです。私こそ勝手に思い出し泣きしちゃって…ごめんなさい」


「ハンカチ貸そうか。大丈夫?」



オロオロと赤い顔をして困ってる多美の兄に、少しドキッとした。

年上なのにどこか幼い所が、なんとなく十のようだった。




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