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幼なじみ
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幼なじみ
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小さな駅を出ると、目の前には大きな桜の木が現れる。
その年は例年より気温が高くて、もう緑の葉がちらほら混ざってた。
「涼ちゃん、待ってよ」
いつものように、十が後ろから追いかけて来る。
小さい時からずっと、十は私の後ばかりついて来た。
あまりにも一緒にいるからって、中学の時はつき合っているんじゃないかと噂までされた。
今まではとくにそれを気にしなかったけど、さすがに高校生活では、十とのつながりを切りたいと思ってた。
だってこのままじゃ、彼氏を作ることもできないから。
「いいかげんにしてよ、十。もう高校生になったんだから、一人で行動してよね。十と一緒にいると、また勘違いされるんだから」
「勘違いってなんだよ。オレ、涼ちゃんといるの好きだよ?」
十が私のカバンをつかみながら、おねだりをするような表情でこっちを見た。
この情けない態度が、子どもっぽくてホントにイライラする。
「私は嫌なの。十が邪魔なの!」