ファンレター
「あ、なんか二人いい感じかも。つきあっちゃえば?」
「ええっ!!」
多美の兄(私もこれから和兄と呼ばせてもらおう)と私の声が同調した。
何を言い出すんだ。
「どうせ和兄はそうしたかったんだろうし。涼だって入学以来、ずっと彼氏作るって燃えてたじゃん」
確かにそうだけど…
だからってそう簡単には……
「ダメかな、涼ちゃん」
「…っはい!?」
急な展開に驚いたけど、和兄は本当にその気らしい。
「あの、でも、そんな突然に……」
「わかったわかった。とりあえず何回かデートとかしてみたら?伝達方法に私を使ってくれても構わないし」
多美はすっかり間を取り持つおばさんのようだった。
「ね、涼。和兄も一応やさしい奴だからさ、一緒に遊んでみてよ」
「うん…まぁ」
毎回多美には押されがちだ。
でも、悪い気はしてなかった。
彼氏を作るのは夢だったし、和兄もいい人そうだし。
何より今は、少しでも頭から十の事を消したかったから。