ファンレター
すれ違う想い
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すれ違う想い
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キャップで顔が半分隠れてるからといっても、わかる人が見ればすぐに気がつく。
それでも十は、私の隣を堂々と歩いた。
私の後を追って来た頃とは違って、なんだかとても大きくて、まぶしくて……
「手、つなぐ?」
「バ、バカ!できるわけないでしょ」
変に、ドキドキさせられてしまう。
横目で私たちを気にしながら、通り過ぎて行く人たち。
つきあっているように見える?
昔みたいに、そう勘違いしてくれる人はいる?
『迷惑』は、いつから『願望』に変わったのかな。
私は、何を期待してるのかな。
私は……
私にとって十は何?
当然のように隣に座って電車に揺られて、寄ってくる人には気安くサインをする十。
ねぇ、携帯で撮られてるよ。
私も隣に写って大丈夫なの?
私がこんなに気にしてるのに、十は顔色ひとつ変えないで。
ただ笑って、みんなに愛想を振りまいてた。