ファンレター
桜の木には、木漏れ日を減らすように日々葉が生い茂っていく。
高校生になって月日ばかりが流れたけど、どういうわけか、私にはなかなか彼氏ができなかった。
ずっと十のせいにしてきたけど、私自身にそれほど魅力がなかったのかもしれない。
憧れの人ができても、そういった人にはたいてい彼女がいた。
夢見ていた理想の高校生活は、それほど簡単には手に入らなかったのだ。
それに比べて、十は高校生活が始まって以来女の子に大人気だった。
幼い顔だちで誰にでもやさしい十は、いつも女の子に囲まれてて。
もう私が構ってあげなくても、充分一人で行動できた。
そしてあの日約束した通り、十は私に近付こうともせず、私も十と幼なじみだということを誰にも言わなかった。
「ねぇねぇ、私、十くんを雑誌に応募しちゃおうと思うんだ」
誰かがそんなことを言ってた。
すると十は、瞬く間に雑誌の月刊ランキングのトップになった。
たしか『私の学校のアイドル』ってランキングだった気がする。