ファンレター
「どうしたんだよ、こんなに濡れて」
目の前のホームには、新幹線の姿が見えてた。
「ごめん、離して。私行かなきゃ」
振りほどこうとする腕に、一層強くつかみかかる和哉の手。
「お願い。放っといて!」
もう夢中で、和哉の気持ちなんて考える余裕もなかった。
ただそこに行かなきゃ、全てが終わってしまうような……
そんな気持ちで、いっぱいだった。
「何考えてるんだよ!自分の彼女がこんなに濡れて、何かを必死で探してるのに、放っとく彼氏なんているわけないだろ!」
「……っ」
和哉の真剣な目に、体が固まった。
頭の後ろで、乗車案内が流れる。
「お願い……離して、っ」
普通じゃない状況と私の涙に、和哉の手が一瞬緩まり。
同時に、発車のベルがなった。