ファンレター
振り返った目の前を、青いラインの車体がゆっくり流れていく。
私はその場にひざまづいて、ホームにいくつもの涙を落とした。
ぼう然とした顔をつたった涙は、指の間にも、ひざの内側にも、幾度となく流れる。
「何があったんだ?」
和哉が優しく問いかけた。
でも、私はもうそんな言葉を必要としてなかった。
「……ごめん」
もう、十のことしか考えられない。
ホームには、次の乗車を待つ列車が入って来る。
私と和哉を避けて歩いていく人たち。
ごめんね和哉。
ずっと気づかない振りをしてきたけど、気づかされてしまった。
私……
私、十のことが好き。
素直になった心は、再び涙を呼び起こした。