ファンレター



ずっと心に秘めて一人で悩んできたことを、誰かに打ち明けることはとても恐くて。

でも、とても心強くて……。



多美が友達でいてくれて、本当によかった。



あの日、ずぶ濡れで帰ってきて、ただ泣き続ける私を前に、気がつけば多美も泣いてた。

学校の玄関で大泣きする二人と、慌ただしく書類を抱えて通り過ぎて行く鬼教師の姿は、どこか異様だったかもしれない。



一言一言が、硬くなった体を溶かすように、口から吐き出される。

ゆっくり…ゆっくり…。



もう時計の針の音は聞こえない。

夕陽が差し込む教室で、私と多美は本当の友達になれた気がした。





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