ファンレター
「やっぱりあのラジオの話って、本当だったんだ…」
突然耳に入ってきた隣の客の言葉に、思わずドキッとした。
自分たちの会話が聞かれてたんだと思って焦ったけど、その先の話を聞けば、その対象が私たちではないことをイヤでも知らされた。
新聞を本棚に戻しながら店を出て行く女の人たち。
「前からあやしいとは思ってたけどさ。なんかショックよねー。濱田サキと鷹宮十が熱愛だなんて。全然一方通行じゃないじゃん」
「……!?」
グラスの中の氷が、音を立てて崩れる。
多美は黙って目を閉じた。
「……もしかして新聞て、このこと?」
うなずく多美。
私はカウンターに置かれた新聞の束から、スポーツ新聞を取り出した。
眩しい黄色で書かれた「熱愛」の文字。
その横には、濱田サキと鷹宮十の名前が並んでた。
もちろん濱田サキの名前は大きく、まだまだ売り出し中の十の名前は小さい。
その並んだ名前を見るだけで、胸にげんこつを押し当てられたような気持ちになった。
細かな字まで、読む気力がない。