ファンレター
駅前には、少し古びた小さな本屋がある。
学校帰りにそこに立ち寄ると、地元のアイドルを持ち上げるように、十の載った雑誌の宣伝が手書きの広告で貼り出されてた。
ランキングのトップになった十には、表紙に登場する権利が与えられてたのだ。
ふん、気取った顔しちゃってさ……
私が雑誌を手に取って十の顔を凝視すると、そんなに見るなとでも言うように、桜の木の葉が十の顔に一枚落ちた。
やっぱりなんだか、変な感じ。
「へーっ。買うんだ、それ」
ドキッ!
驚いて振り向くと、そこには久し振りに近くで見る十の顔。
雑誌の表紙と何度か見比べた後、私は思わずそれを後ろに隠した。
十の載ってる雑誌を買う自分なんて、すごくかっこ悪い。
「別に、十を見たくて買うわけじゃないんだから!うぬぼれないでよっ」