ファンレター
「新人を売り出すためによくやる手だよ」
多美が後ろからそっと顔を出した。
「そ、そうかな。…でも、前にも仲良さそうな感じ電話で聞いたことあるし」
自分でもわかるくらいオロオロしてた。
今の私が信じられるものってなんだろう。
十の手紙?
新聞の内容?
あの時の電話の声?
訳がわからなくなって、その場にしゃがみ込んだ。
「お客さん、大丈夫ですか?」
黙って店を出て行く私に、慌てて多美が付き添う。
「気にすることないって。こういうのよくあるじゃん」
ショップで買った服の袋が、やけに重たく感じた。