ファンレター



自分では読む気がしなかった記事を、多美が細かく、しかも自分の見解も含めながら話してくれた。

とは言っても、そんなにスムーズに私の頭には入らなかったけど。



「濱田サキがね、十くんに手紙をもらったことがあるとか訳のわかんないことを言ったらしいのよ。あのラジオ番組のこともあったから、そのせいで勝手に話がここまで大きくなってるだけ。
ほら、濱田サキって今人気のトップクラスでしょ?それに便乗して、十くんの名前も広げようっていう事務所の手だよ!芸能界ではよくある話だって」



家に帰る足取りも重い。



繰り返し話をしながら、多美は必死に私を元気づけようとしてくれてたというのに

私の帰りを待ってた父は、ソファの背もたれから顔をのぞかせて、ニヤニヤとまったく気の利かない言葉を投げてきた。



「涼、出遅れたなぁ」


「うるさいっ」



私は父の足下にかばんを投げつけて冷蔵庫へ向かった。



『青春BLUE』
今日はいつもより酸味が強い。




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