ファンレター
買った服には、袖を通す気にもならなかった。
「あれは違うからって、電話くらい掛けてくればいいのに!」
都合のいい怒りが込み上げる。
でも、落ち着いて考えたら私が間違ってたんだ。
私は十の所へ行かなかった。
十はもう私のことを諦めるって……。
だから今さら言い訳の電話を掛けてくる必要なんて、あるわけないんだ。
「ばかみたい、ばかみたい、ばかみたい!」
ベッドに顔を埋める。
ちらっと横目にした買ったばかりの服が、妙にむなしく見えた。
多美はどうするつもりなんだろう。
修学旅行中に、抜け出す気でもあるのかな。
見つかったら、この前のような課題では済まされないのに。
停学だってあるかもしれない。
第一どうやって抜け出すの?
ううん、その前に、十と会う意味なんてあるのかな。
もしかしたら本当に十は、濱田サキと熱愛中かもしれないんだから。
考えたら一層ブルーになった。
「これって、もしかしてそういう意味?」
コレクションのように並べた『青春BLUE』のボトルが、つやつやイヤミに光った。