ファンレター
さっそく情報とばかりに多美に電話をした。
「やっぱりそうじゃん!こうやって十くんを売り出して行く作戦だって。鷹宮の母様も言ってたんでしょ?何でもないって」
「そうだけど…。相変わらず十の電話番号も住所も教えてくれないし、今いち信用していいかわからないよ」
「アハハ、大丈夫だって。鷹宮の母様も涼の味方なんだし」
私はこの時、心にじんわりと感じるものに気がついた。
以前なら、いろんなことをもっと深刻に悩んでたはず。
一人では、どうしようもできないことだってあったんだ。
それなのに、今はどうだろう。
悩んでることに変わりはないのに、こんなにも気持ちが軽くて、心強い。
多美の存在は、どんなこともうまく行くんじゃないかって、そんな気持ちにさせてくれるようだった。
「多美、私手紙書こうかな」
「十くんに?ファンレター?」
「うん。一方通行でもいい。見返りを求めるんじゃなくて、私の気持ち知ってほしいから」
「いいんじゃない?ファンレターってそういうもんだよ」