ファンレター
窮屈なソファから腰を上げて、私は自分の部屋へと退散する。
戸棚の一番下の引き出しには、たくさんの便箋が入ってた。
「十の好きな水色に決定!」
悩んでても仕方がない。
今、十とつながる手段は、ファンレターしかないんだから。
私は水色の便箋にペンを走らせた。
ドラマ出演おめでとう!の大きな飾り文字。
新聞のことは何も書かないことにした。
そして……、いつ読んでもらえるかわからない手紙の内容に、希望の光を込めて記す。
『十。わたし来週、東京に行きます』
どうしてかな。
きっと逢えるような気がする。
私は二時間かけて、再び10通のファンレターを書き上げた。