ファンレター
私と十の住む地区は、そこから二つ駅を越えた場所にあった。
でも、一緒に電車に乗っても、もう以前のように隣には座れない。
小さな街だし、噂はあっという間に広がるから。
「あのぉ、鷹宮十くんですよね。これ…いいですか?」
「あ、はい。もちろん」
「キャー、やったぁ!」
取り囲む女子中学生にサインをする十。
そしてそれを遠目から眺める私。
なによ。
嬉しそうに笑っちゃって。
きっと、優越感でいっぱいなんでしょうね。
あれはもう、十なんかじゃない。
表紙で笑う十が、すごく憎らしく感じた。