ファンレター
ビルを見れば歓声、車線の数を見れば歓声、地元では見れないような変わった髪型の人が通れば歓声。
都会に降りれば、みんなカワイイ田舎の高校生だ。
駅の中だけでも、すごい数の人が行き交ってる。
私は無意識に十の姿を探した。
十、ここにいるんだよね。
すぐ近くにいる。
そう思うだけで、不思議と幸せな気分に浸ることができる。
「ちょっと!あそこのカップル、キスしてるよ。こんなに人がいっぱいいる前で!やっぱり都会の人は度胸が違うよね」
誰かが騒ぐと、一斉にその二人に釘付けになる田舎の高校生団体。
私もつられて視線が止まった。
「こらーっ!お前らこっち見んかー!移動するぞぉ!」
その声に反応しながらも、カップルを横目で見続けたままで、列は山口の後をゾロゾロ付いていった。
見慣れてない風景だから、やっぱり気になっちゃう。
「でもなんかイイよね、あ〜いうのもさぁ」
多美が目を輝かせて言った。
「ねぇ涼、聞いてる?」
「あ、…うん」