ファンレター
やがて三台のバスは、少し郊外へと走りはじめた。
バスの中が少しざわつく。
なぜって、予定してた方向となんだか違うのだ。
「あれ…?東京着いたら、すぐグループ行動じゃなかった?」
「こっち向かうはずじゃなかったよね」
みんながキョロキョロと周りを見出す。
すると担任が運転席の隣へとやって来た。
「えっと、急なんですが、皆さんに会わせたい人がいるということで、放送局の方へ寄ることになりました」
「キャーっ!!」
普段からおとなしくて目立たない担任の声に、バスの中が一層ざわついた。
「誰かな誰かな?」
「芸能人?すごくない?」
「私たちに会うってことは、うちの学校に関係ある人じゃないの?」
「それってもしかして!」
揺れるバスは大盛り上がり。
「涼、十くんと打ち合わせでもしてたの?」
「っ!全然」
私も首を振りながら、自分を落ち着かせることに必死だった。
だって…
それって十なの?
十と会えるの?