ファンレター
それからしばらくすると、バスは小さな放送局らしき所へ入って行った。
たいしたことはない、以外と普通のビルだ。
先に到着したバスから、隣のクラスの生徒が降りはじめてる。
そして山口の慌ただしい姿も見える。
「涼、あの服着といたら?」
「ばか!無理に決まってるじゃんっ」
多美の背中を押しながら、気ばかりが焦る。
十と会えたら何を話そう。
でも、みんながいる前では、そんなに親しくできないよね。
それなら、せめてかわいく見られるように……。
私はあの服と一緒に持ってきた色付きリップを、ポケットに忍ばせた。
「ほら、クラスごとに並べよー」
こういう時は、背の小さい子がうらやましい。」
近くで見れる一番前に並べたならと、これほど悔やんだことはなかった。