ファンレター
しばらくすると、ガラス扉の向こうから、ペコペコ頭を下げながら出てくる山口が見えた。
そしてその後ろを、ゆっくりと歩いて来る人がいる。
「あ、どうもどうも。よろしくおねがいします。いやいや、本当にありがとうございます」
山口はとても恐縮してる様子だ。
二人が出てくると、他の教師たちからも感嘆の声が漏れた。
「おおっ!」
さっきとは逆で、今度は生徒ではなく教師たちがざわつく。
「注目ー!布施原由起子さんだ。お前等が来ると聞いて、わざわざ時間あけてくださったんだぞ!」
胸を張りながらなぜか自慢気の山口。
誰だろう、このおばさん…。
「いやぁ、布施原さん。光栄です!本当にありがとうございます」
教師達の手が、次々にそのおばさんの方へのびる。
ちょっとした握手会だ。
「たしか2時間ドラマとかに、たまに出てくる人じゃない?」
多美が耳打ちする。
そう言えば見たことあるような気もするけど……。
どうしてこの人に会いに来たのかな。