ファンレター
「それじゃあ1組から順番に行くぞー」
ガッカリはしたけど、ちょっとは十のいる世界と同じような場所を見学できるってことに、足取りはよみがえってきた。
「私あの人知ってる。昔、男関係でいろいろあった人だよ。お父さんに聞いたことあるもん」
「たしかそのせいで、一時期テレビにも出ていなかったとかだよね」
「地元の汚点みたいになってるんじゃないの?だからあんまり名前聞かないんだよ、きっと」
そんな会話が、どこからともなく聞こえた。
ひんやりとしたビル内。
「ねぇ多美、私の存在は十の将来の邪魔にならないのかな」
なんとなく、気になってたこと。
「また余計な心配してる!」
列は暗いスタジオへと吸い込まれて行った。