ファンレター
放送局といっても、なかなか有名な人に会えるわけでもないみたい。
倉庫のようなスタジオを少し見た後、私達は放送機材の体験をさせてもらった。
「私ちょっと抜けるから」
多美がコソコソ動き出す。
「え、多美…ちょっと?」
いったいどこへ行くつもりだろう。
私の言葉も適当に聞き流して、多美は扉の向こうへと消えていった。
「これが光ると撮ってる合図だよ」
中の案内は、裏方さんのような人と、カメラマンの人がしてくれてた。
ここの放送局では大きなバラエティなどの撮影はなく、CM撮りが主らしい。
「こんな小さい小物も、CMの中ではこんなふうに写るんだよ」
カメラマンがそう言って、小さいミニカーを手にモニターを指差す。
そう言えばこの声……。
「あーっ!あれ『青春BLUE』のCMに出てたラブラブパラソルだー!」
誰かの声に、全員が一斉にそっちの方を振り向いた。
スタジオの隅にある大道具の隙間から、ハート形バルーンのぶら下がったピンク色のパラソルが顔を出してるのが見える。
たしかにあれは、あのCMの…