スイッチ
結局この日は一言も話しかけられずに終わってしまった。

くそう、明日こそは!!

無言で去ってゆく桜木の背中を見ながら心の中で叫んでいると、

「なぁ、朝倉」

後ろの坂井が話しかけてきた。

「んだよ、俺今機嫌悪ぃんだけど」

「八つ当たりしてんなよ。てかさ、マジで桜木とかかわいくね?」

おまえまでもか。

「いやいや、俺にはマリちゃんがいるからさ、おまえに譲るって」

そういいながらニヤリと笑う。おまえもしや・・・

「朝倉わかりやすすぎ。ま、協力してやっから」

「・・・坂井、恩にきる」

「ははっ、かしこまってんじゃねーよ。おまえらしくもない」

「だよな。じゃ、ひとつよろしく頼むわ」

「はいはい、頼まれましたっと。てかさ朝倉、おまえ今日暇?」

「暇だけど?」

「お、じゃあ駅前のCD屋いかね?」

「OK、行く行く」

この時はまだ、知らなかったんだ。

詩音、おまえはこの日何を思って過ごしてた?

期待?不安?諦め?呆れ?

それとも

絶望?


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