《続》手にしたあとは?
店長は、彩の兄貴。
今は彩と二人で暮らしてる。
このバイトだって彩の紹介で始めたんだ。
「彩、そうとうお前にキレてたぞ。あんなヤツ忘れろ!って何故か彩がやけ酒…。おかげで俺は寝不足。」
「…すいません。あの、……華乃は?」
「なんとか落ち着いてるよ。なんとかな…。」
もちろん俺が悪いから仕方ない事だけど、なんだか居心地が悪い上にさらに追い討ちをかけられた気がした。
「分からなくないよお前の気持。昔の女に対して愛がなくなっても情は残る。」
「店長…。」
「でもソレを今大事な女に分からせるのは無理だ。情を捨てない限り、お前の所に二度とはなチャンは戻って来ねぇよ。優しいお前にそんな事出来るか?ん?」
店長は少し呆れた顔で俺に問掛けた。
「…情を捨てる…。」
俺の長い沈黙の間、店長は黙ってグラス拭いていた。
ひとつ、またひとつ。どんどんグラスが棚にしまわれて行くのを、俺は決断を迫られてる様な感覚で見つめていた。
「華乃をもうもう一度抱きしめられんならどんな事でもしますよ…っ!」
決心した俺は力余って叫んだ。
店長はフッと笑って真剣な目で言った。
「その言葉忘れんなよ。」