《続》手にしたあとは？

「…大樹、帰って？」



目が合ったと思ったらすぐにそらされた。



「華乃っ…」


俺は隣にいる男の存在なんておかまいなしに華乃の腕を引き寄せた。



「や…っ」




華乃の瞳から頬へ、一筋の涙が伝った。


「痛…っ。離し…て…。」


その瞬間…男が俺から華乃を引き剥がした。



「嫌がってるよね？離してあげようよ。」



この状況を理解してないのか？満面の笑みを浮かべてる…。


「店長…。」



華乃がそいつの後ろに隠れてしまった。



俺は何も言えずにただ黙っていた。



「君、今日の所は帰った方がいいよ。坂井さんは僕が送ってくね。」



笑顔なのに何故か圧倒されて、俺は身動きすら取れずに去って行く華乃を見つめた。







たった数日前まで俺の腕に抱かれて幸せそうにしてた華乃…



今は触れられるのも、目を合わせるのですら嫌なのか？




そんなに…？




俺の知らない所で、俺の知らない出来事が、華乃の耳に入っていたなんて…


この時は予想もしなかった…