《続》手にしたあとは?
◇10◇
夏合宿。
本当は行きたくなかった。だって大樹に会ったらきっと泣きそうになる。
好きで、好きで、大好きで、やっと手にした大樹との幸せは、簡単に指の間からすり抜けちゃった。
どれだけ泣いたかな。彩にもすごい迷惑かけた。
でも決めたの。大樹とはただのサークル仲間に戻るって。幸せだった記憶は絶対忘れないよ。
大樹の声を聞いたら、決心がにぶりそうになったんだ。
私がもう一度やり直したいって言ったら、大樹はきっと前みたいに抱き締めてくれる。
でも大樹の手が触れた瞬間、やっぱりダメだった。
だって…あの電話越しの言葉が頭から離れない。
『大樹を返して』