《続》手にしたあとは?
◆11◆
ただ、偶然だった。
バーの店長、直人さんが最近毎晩俺の為に作ってくれるカクテルが、青い海の底みたいだったから。
海の底が見たかった。
華乃と約束した水族館が思い浮かんだ。
ただそれだけだったのに…
偶然会った驚きより、会えた嬉しさが勝ったから、俺の口元は緩んだ。
それと反対に華乃の笑顔は引きつっていた。
「何してんだ?一人か?」
「うん。この前店長に連れてきてもらって…この水槽気に入っちゃったの。大樹は?」
店長…デートって事か?
「そうか。俺は…海が見たくて…かな。」
未練がましくお前との約束がなんて言えない。
「海?だったら直接海行けばいいのに。」
クスっと華乃が笑って、場が和んだ。
「いいんだよ近場が。この水槽で十分!」
「だね。本当に綺麗…」
華乃は目を細めて、羨ましそうにイルカを見た。
「あ!華乃、ここでチョット待ってろ。」
「ん?」