世界の終りで愛を歌う
第1章 光と影
父と子。その関係が良好なら、
その人は幸せと言える。
私は良好とは言えなかった。
そもそも、父親と会話する暇もなかった。
忙しいのはもちろん私ではなく、
父のほうだった。
と一人の男が本に囲まれたと言うか、
本しかない部屋に一人のいた。
その男の名前は沢村一樹(サワムラカズキ)
年齢は19歳。受験に失敗して、
北海道大学で仮面浪人をしている。
彼の志望していた大学は東京大学。
彼の父親はそこの出身であり、
医師の免許も現役で合格した。
もっとも、東京大学の医師の免許の合格率は80%。
落ちる人は司法試験の非ではない。
試験試験は20%しか現役で受からない。
まぁ、大学3年から司法試験の勉強始まるのだから当然なのだが。
よって、大学1年の時から六法全書を片手に勉強を続けた沢村の父親の勤勉さの結果だった。
だが、息子の彼にはその才能は受け継がれていないらしい。
後、補填だが彼の父親は、
司法試験と医師の免許両方取得した。
人より社会に出る時間は遅れたが、
試験には受かった。あり得ない事だが、
彼の父親は医学部でありながら、
司法試験も合格したのだ。
それを可能としたのが、
ジョン・F・ケネディの使った速読だった。
もっとも、彼の速読とは今の進化した速読とは違い、
2割しか内容を見ていなかったのだが。
2割で全体を把握する。
言うならば、重要な部分しか見ないし、覚えないであった。
それが沢村の父の特技であり武器であった。