世界の終りで愛を歌う
失われた文明に歴史。人間には知らなくて良い情報がある。
新しい世界には、滅びた文明の知識はいらない。知恵もいらない。
何故なら、失敗した過去の人類の歴史は不要なのだ。
よって、アダムとイブの前に存在した文明と人類の記録はこの世から消した。
いや、そもそも存在させなかった。
人間の失敗の歴史。滅亡の歴史は今の希望に満ちた人類には必要がないからだ。
だが、この物語の主人公の実は知った。
古代文明の事を。世の中には、
神の名を使い、悪魔が人間の腕を使いペンを走らせる事がある。
自動書記という能力だ。
だが、それは神もたまに使う。
よって、どちらの力から出るのか判断に困るのだ。
それにより、古代文明の真実の姿が新世界に広まった。
少なくても、全世界で1000万人はこの情報を知っているだろう。
知るだけなら良いもしも、行いが伴うならば――地獄より激しくも苦しい苦痛が本人を襲う事だろう。
本を愛する二人は、その好奇心に身と魂を焼かれる事も知らずに、
好奇心いっぱいの瞳で、折りたたみ型の長方形の物体で文字を紡ぎ、
肌の白い女はそれを瞳を輝かせて覗き込んでいた。
男は彼女が自分の文章を覗いている事に気がついていない。
ただ、文章を紡ぐ事に集中していた。