世界の終りで愛を歌う
私はこのように水戸黄門のように嫁をコントロールしていた。
彼女は美しい顔の悪魔。
顔の堀は深く、鼻が高く、
目鼻立ちがしっかりとしている。
外国人のような顔をしていると思ったが、
彼女はドイツ人とのクォーターらしい。
ハーフではない。4分の1はドイツ人の血を引いている。
「出来たわよ。食いしん坊君。よく噛んで食べなさい。メタボにならないように」
お前は私の母親か!
と言いたいところだが、
彼女の作る料理は犯罪だ。
妙に美味しいので、最後まで一気に食べてしまう。
私を太らせようとの策略としか思えない。
「最近本当に腹がヤバいわよ。内科医者が、しかも予防医学の癖にメタボじゃね」
グサリと刺さる一言を言う喜美枝。
予防医学の癖にか……。
「最近どうなの? 予防医学は金が掛るが定説だけど? 相変わらず無口ね……」
「冗談ではない! 予防医学は、医療費の削減に役立つ! しかも個人病院でこそ輝くのだよ!」
私は喜美枝の言葉に久々に熱くなった。
彼女は私を燃え上がらせる。
良い意味でも、悪い意味でも。
彼女は私のブラックボックス。
いや、パンドラの箱かも知れない。
開けてはならない禁断の箱。
それが彼女だ。
「やっと話してくれたね。怒ったのかと思った」
彼女の笑顔が眩しい。
先程の悪魔のような印象はない。
彼女は不思議だ。神秘に満ちていた。