世界の終りで愛を歌う
バトルロアイアルの第3ラウンドは夜の生活だった。
「子供作るわよ!」
とマウンドポジションを取る彼女。
拒否をしたらそのまま殴られそうだ。
「作ってもいいが、君は論文に忙しいし、一年先まで手術患者が詰まっていると母に聞いたぞ」
「あ……それは……だけど……」
妙に歯切れが悪い。彼女の遠慮無しにずけずけと言う部分が好きなのだが。
「どうした? そんなに焦って」
私は困惑してしおらしい彼女が妙に女性らしく見え、
心配そうな声を出していた。
自分でもこんな声が出るのかと驚いた。
「ねえ……私の事が嫌いになった? 私は魅力が無くなったのかな?」
彼女は泣いていた。私は父親に似たのかも知れない。
愛を口に出さなくても、
勝手に相手に伝わると思っていたのだ。
「そんな事はないよ。でなきゃ、とっくに離婚しているさ」
私はそう言うと、起き上がり彼女の首を抱え抱きしめた。
「ありがとう……来年は子供を作ろうね」
彼女は私と同年齢に見えないくらいに幼く見えた。
彼女は不思議だ。10代に見えたり、30代にも見える時がある。
彼女が1日に3人の緊急手術をした時は40歳に見えたりした。