世界の終りで愛を歌う

 今週は仕事が忙しかったな……黒い本を読む暇もなかった。

値札が6万から666円と言う価格に惹かれ、

詠美と二人で購入しちまったが……。

もう日曜日。今日は読んでみようかな。

教会の後で。教会に行ったら詠美に本の内容を聞いてみよう。

手にした瞬間に感じたあの妙な感覚。

あの強い期待感は、どんな名作より強かった。

手が震える程に。


実は起きて、朝日を色白の肌に受けながら、そう考えてスーツに袖を通した。


黒いに高級なスーツに、青と白のストライプのネクタイ。


そして、よく洗って輝く顔が黒いスーツにミスマッチな程に輝いてみえる。


そして、黒い車に乗り込み、彼は教会に向かった。


彼の安らぎの時間。彼は教会をサボる。

だが、熱心に毎週通う人々と同じくらい教会を愛していた。


「おはよう。実君! 今日は早いね」


教会の人々が揃って同じ事を言った。

5人ばかりに同じような挨拶をされて、

実はパイプ椅子に腰掛け、

しばし授業に集中した。

日本では見慣れない日曜学校。

ミッション系統の学校に入学したなら、

日曜日は彼等と同じになるだろうが、

普通は日曜日は娯楽の時間だ。

家族旅行に、映画、買い物、友人と出かける。


それが日本人の主な休日の過ごしかた。

実達はアメリカ流の過ごし方と言えた。
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