世界の終りで愛を歌う
今日は、詠美ちゃんは来ないのかな。
ってサボりの常習犯の俺の言えた義理じゃないな。
彼女はいつもそうだ。
貸した本の感想が聞きたかった時も教会に来なかった。
今回もかな。気になるな……やはり読んでみよう。
変えるのが楽しみだ。
「このように終りの時が近づいています。
飢饉に疫病。この中で飢饉の足音は近くなっています。
この中で私達は一体何をするべきでしょうか?」
と日曜学校の教師の支部会長の加藤が言った。
誰も進んで質問に答えを話さない。
「それは、備える事です。飢饉に備え、食料と水を蓄えなさいとの教えがありますし」
模範回答をする副支部会長の佐々木。
「はい!」
「どうぞ。実兄弟」
この教会では名前の後に兄弟を付ける。
人類皆兄弟と言う事だ。
同じ宗派以外の人をそう呼べば大問題だが。
「食料や水を備える事も大切ですが、
終りの時が来る前に行う事があります。
それは、日本の教会員が爆発的に増えると言う予言を成就させる事です。
終焉に備えつつ、予言の成就の為に前向きに生きる。
それがベストな備えだと僕は思います」
実の意見はいつも途方もない。
まるで、教会の大幹部のようだ。
1200万人の頂点にいる12人より遥かに落ちるが。
彼等は非常に金持ちであるが、
その倍は人間的な魅力と知性と知恵に満ちていた。
その模範に従い、近づくだけで、
億万長者に余裕でなれる。
だが、富を求めるならば、
近づく事は出来ない。
近づく為には、富を求めず、
知恵を求める事だった。