世界の終りで愛を歌う

 そんな組織に属する実と詠美。

特に詠美は良い模範だ。

実は良い模範とは言えない男だ。

それが私の付け入る隙を生じさせた。

楽しみだ。私の本を手にして彼がどう変わるのか。


そう思った瞬間に私は外に出されていた。

やれやれ退屈になるな。

元神の僕だから福音の話は嫌いではない。

福音の勉強も。だから、

強い霊能力を持った人間の影に隠れ、

神の力を抑える事は容易だ。

人間の体に乗り移る事は不可能だ。

悪魔付きという病気は私達の手による物ではない。

悪魔は、天の戦いに破れた為に肉体を持った地上に降りられない。


人間の体に入り込む事も不可能。

いかなる例外も存在しない。

この私ですら無理なのだから。

どの悪魔も不可能である。

映画の中に悪魔払いの人間がいるが、

あれは作り話。悪魔に取り憑かれた人間は、

自分が悪魔だと思い込んだに過ぎない。

もちろん、悪魔はその横で囁くくらいはしたが。


弱い人間は、惑わしやすい。

性の快楽の世界に叩き落とす事も。

性の普及は我々の普及である。

携帯電話と共に、私達もずいぶん普及したものだ。


インターネットの非ではない。

携帯は最高の堕落手段と言えた。

正しく使えば、幸福を持たらすのに。

幸せになりたければ、
出会わない事だ。出会いは運命。

電脳世界の出会いは運命ではないのだから。

直接肉体と魂が引かれてこそ価値がある。

電脳の出会いは、運命を惑わす。

幸せになる事も出来るが、

運命の相手は確実に逃す。

まぁ、実のように過酷な運命ならば、

電脳世界の生温い偽りの愛の方がましだが。
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